第75章

彼女の手が微かに震え、そのまま連絡先の番号に発信してしまった。

その時になって初めて、それが坂田和也の番号だと気づいたのだ!

慌てて切ろうとしたが、指先がピタリと止まる。

心の奥底で、二つの声が激しく言い争っているかのようだった。

一つは、すぐに電話を切って警察に通報しろと急かす声。もう一つは、このまま繋いで和也に助けを求めろと囁く声だ。

一年間も共に暮らしてきたのだから、情だってあるはずだ——その声はしつこく彼女を惑わせ、和也の心の中で自分と夏目夕子のどちらが大切なのかを賭けてみろと煽り立てる。

「ツーツー……」

通話が切れた無機質な音が鳴り響いた。

小林絵里は即座に18階...

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