第766章

小林絵里は、彼をちらりと見た。

胸の奥が、どうにも落ち着かない。

まさか、こんなにあっさり話が通るなんて……。

坂田和也はその視線に気づいたのか、薄い唇をかすかに吊り上げて言う。

「後悔したか? なら、今すぐ帰るか」

小林絵りは即座に視線を引っ込めた。

――この男、調子に乗るのが早すぎる。

財産の揉め事がなくなったぶん、手続き自体は驚くほど簡単だった。

けれど、今日中に離婚届が受理されるわけじゃない。三十日の離婚冷静期間がある。

小林絵里は眉を寄せた。

この三十日が何事もなく過ぎてくれればいい。でも、もし途中で何か起きたら……。

「その場で手続きできないんですか?」

...

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