第770章

坂田和也は箱を受け取ろうとしなかった。形のいい瞳で彼女をまっすぐ見つめ、「気に入らないならしまっておけ。いつか好きになったら、そのとき着ければいい」と言う。

小林絵里は一瞬黙ってから言った。

「わからないんですか? わたし、要りません」

それでも坂田和やは平然と返す。

「でももう渡した。要らなくても受け取れ。嫌なら捨てればいい。どっかの乞食が拾ったら、一晩で成り上がれるぞ」

小林絵里は箱をつまむ指先に、きゅっと力を込めた。中に入っているのは値の張るピンクダイヤ。少なく見積もっても、何千万円では到底きかないはずだ。

こんなもの、捨てるなんて――ありえない。

ためらいを見て取ったの...

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