第771章

小林絵里は脇へ回り、壁際に立てかけてあったバットを手に取った。視線は玄関ドアに釘づけのまま。

また、暗証番号を打ち込む電子音。――そして、またエラー。

顔色がさらに悪くなる。やっぱり監視カメラを付けるべきだ。そうすれば、外の様子が見える。

もう一度エラーが鳴ったあと、玄関先はすっと静まり返った。

小林絵里はスマホを取り出し、庄司亜南へメッセージを送る。

小林絵里【うちのドアの前に誰かいるかも。そっと上がってきて見て】

庄司亜南【承知しました、奥様!】

返信を確認すると、小林絵里は息を潜めて待った。

十分ほど経ったころ、控えめなノックがコツコツと響く。

「俺だ」

玄関の向こ...

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