第773章

  小林絵里の不機嫌そうな顔を見て、坂田和也は薄い唇の端を、かすかに持ち上げた。

「どうした。行きたくないのか? 祝福する気もない?」

 絵里は一度、深く息を吸い込む。そして小さく言った。

「……行きましょう」

 ここまで来て、今さら引き返せるわけがない。

 それに――これは、ずっと前に彼に約束したことだ。

 もしこの場で踵を返したら、冷静期間が明けても、彼はきっと現れない。離婚届の手続きをしに、役所へ一緒に行ってくれる保証がなくなる。

 離婚証明のためだ。耐えるしかない……!

 坂田和也の口元の弧は、さらに深くなる。ドアマンが車の扉を開け、彼が先に降りた。

 高川グループ...

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