第775章

高川寒彦はワイングラスをつまむ指にぐっと力を込めた。端正でどこか中性的な顔立ちには、非の打ちどころのない笑みが張り付いている。

「お越しいただけて嬉しいです。お祝い、ありがとうございます」

そう言って、次のテーブルへ向かおうとした。

「待て。うちの妻がまだだろ」

坂田和也が、あからさまに呼び止めた。

――これでは、行けない。

周囲の視線が集まっている。ここで醜態を晒せば、Y市の笑いものになるのは目に見えていた。

小林絵里は小さく濁った息を吐き、グラスを持ち上げる。高川寒彦と小嶋未沙を見据え、淡々と告げた。

「ご結婚おめでとうございます。お二人の願いが叶いますように」

「あり...

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