第788章

小林絵里はリビングでテレビを見ていた。坂田和也はスーツの上着を脱ぎ、シャツの袖を肘までまくり上げ、ダイニングとキッチンを隅々まで片づけてから姿を現した。

 彼女はあぐらをかいて画面に見入り、腕の中にはクッション。やわらかく明るい照明が肩口に降り注ぎ、その佇まいは絵に描いたようにしとやかで、どこか儚い。

 そこへ坂田和也が、絵の中に踏み込む。

 彼は当然のように隣へ腰を下ろし、視線をテレビへ向けた。

 時代劇だ。衣装とメイクは悪くないし、役者の芝居も上々。小林絵りは夢中になっている。

 けれど坂田和也はさほど興味を示さず、彼女の横顔を眺めた。

 テレビを見るより、もっと面白いことが...

ログインして続きを読む