第790章

小林絵里は一瞬、表情を止めた。「そんなに早く吹っ切れたの?」

松本桜は小林絵りの肩に腕を回し、酔いの回った小さな顔はちらつく灯りの下でうっすら赤く染まっているのに、視線だけはぼんやりと前を見ていた。

「この前さ、古川家の人たちと会ったんだけど。初っ端からいきなり洗礼だった。花厅っていう広間で、2時間も待たされてからようやく通されて。会ったと思ったら、用件も言わないで、名家のお嬢様の写真をどさっと出してきたの。笑えるでしょ? わたしに、古川修一の将来の奥さん候補を選べって」

そこまで言って、桜の目からぽろりと涙が落ちた。慌てて指の背で拭いながら、声がかすれる。

「絵里……わたし、古川修...

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