第793章

妹の話になると、藤原景丞の顔には甘やかすような色と、どうにもならない諦めが滲んだ。

小林絵里は黙ってそれを見つめ、少し間を置いてから口を開く。

「……ひとつ、聞いてもいいですか」

「言ってみろ」

藤原景丞は彼女を見た。眉も目元も、どこか柔らかい。

なぜだろう。小林絵里を目にすると、いつも理由のない親近感が胸に差してくる。そのせいで、普段よりも辛抱強くなってしまう自分がいた。

小林絵里は言葉を選ぶように一度息を落とし、静かに続けた。

「知り合いにいるんです。……その人、誰かに身分を乗っ取られて。乗っ取った側は、その人の全部を手に入れて、しまいには本物を殺そうとしてきた。徹底的に潰...

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