第800章

坂田和也は諦めたように笑った。

「そうだよ。俺が勝手に頼んだんだ。お前に頼まれたわけじゃない。だから、お前は何も払わなくていい」

小林絵里はすっと視線をそらす。

また、二人のあいだに沈黙が落ちた。

病院に着くころには、空はすっかり暗くなっていた。

小林絵里が日野安月のために用意したのは、療養に向いた個室だった。だがいま、その病室の前には中年の男女が立っている。

中年の女がドアをどんどん叩き、甲高い声でわめき散らしていた。看護師と警備員が脇で止めにかかっているのに、まるで聞く耳を持たない。

「日野安月! この金食い虫! 出てきな! 家庭教師のバイトに行ったって言っただろ! なんで...

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