第805章

小林絵里は小さく息を吐いた。吐息が目の前で白くにじみ、冷たい風にさらわれてすぐ消える。

――また、彼と絡んでしまった……?

離れたかったはずなのに、どうしてか二人のしがらみは増える一方で……それが、たまらなく苛立たしい。

離婚したら、もう厄介事が起きませんように。

ただ、平穏に暮らしたいだけなのに。

小林絵りが車に乗り込むと、坂田和也もすぐに追ってきて助手席に座った。

それについて何も言わず、彼女はエンジンをかけ、楓の苑へとハンドルを切る。

戻ったころには、もう夜9時を回っていた。

半日近く動き回っていたせいで、さすがに疲れている。小林絵里はあくびを噛み殺し、眠気を隠しきれな...

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