第808章

坂田和也は言った。「図面、まだ見るんだろ。ここにパソコンがある。続き、やっていい」

小林絵里は眉をひそめ、どこか拒むような表情になる。

それでも坂田和やは彼女を見つめたまま、低く切り出した。「小林絵里、少しだけ……俺に付き合ってくれ。もうすぐ離婚する。離婚してからこんなこと頼んでも、たぶんお前は聞かないだろ。だから――……夫婦としての務め、ってことでさ?」

声は低く、やわらかい。語尾をこれ以上ないほど抑え、黒い瞳は真剣で、濃い情をにじませて彼女を捉える。どうしても、ここにいてほしい。そんな渇き。

胸の奥のどこかが、またちくりと揺れた。

魔が差したみたいに、彼女はうなずいてしまう。

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