第819章

松本桜がふと顔を向けると、そこには古川修一がいた。

 彼女は表情ひとつ変えずに視線を引っ込め、小林絵里のほうへ向き直る。

「なんか急に、焼肉って気分でもなくなってきた。絵里は?」

 小林絵里はそれに吹き出した。

 だが古川修一は眉をわずかに上げ、こちらへ歩み寄ると、松本桜の頬をつまんで持ち上げる。

「どういう意味だ。俺の顔、見たくないって?」

 松本桜はその手をパシッと払いのけた。

「見たいか見たくないか、あんた自分でわかってるでしょ?」

 古川修一の目が危うく細まる。

「さあな。わかんねえ。なら、ちゃんと説明してみろよ」

 松本桜はふん、と鼻を鳴らした。

「女同士のご...

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