第820章

「はい」

 店員はうなずくと、そのまま踵を返して去っていった。

 松本桜は坂田和也を見て、次に小林絵里へ視線を移す。片手で顎を支えたまま、ぽつりと言った。

「今ね、ひとつ思ったんだけど」

 小林絵里が首をかしげる。

「なに?」

「わざとだよ、あいつら」

 小林絵里はぱちりと瞬きをする。けれど、その「わざと」が何を指すのかはすぐに飲み込めた。

 こちらが来た直後に、向こうも追いかけるように現れた。偶然だと言われても、信じろというほうが無理がある。

 それに、会食で焼肉を選ぶだろうか。

 高級レストランだって、会員制の店だって、星付きホテルだって——いくらでも行き先はあるはず...

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