第823章

動揺したの?

  怖くなった?

  迷ってる?

  たぶん……そう。

  その答えが頭に浮かんだ瞬間、小林絵里は悟った。自分がずっと握りしめてきた意地は、結局――笑い話になってしまったのだと。

  これまでのことを思い返す。傷つけられたこともあれば、優しくされたこともあった。なのに、わたしはどうして、あそこまで離婚にこだわっていたのだろう。

  たぶん、何度も重ねられた不信感。あまりにも大きい落差。あんなに愛し合っていたはずなのに、彼が記憶を取り戻し、立場を取り戻した途端、彼は――彼じゃなくなった。

  ほかの女との縁。恩返しをしたいと言いながら、わたしがしてきたことだけは、ま...

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