第829章

「うん、わかった」

 小林絵里は宥めるように彼女の手をぽんぽんと叩き、ひとまずその考えを引っ込めさせた。

 だが松本桜は、彼女が本当に配信を始めるんじゃないかと怖くて、一晩じゅう片時も離れずに付き添った。

 自分勝手なわけじゃない。

 坂田和也は男だ。権力も金もある。話題を握り潰すなんて、やろうと思えば造作もない。

 多少叩かれたところで、痛くも痒くもないだろう。

 でも小林絵りは違う。

 彼女には何もない。

 絶対に世間の目に晒しちゃいけない。

 ここの連中は、気に入らなければすぐ誰かを晒し上げて叩き潰す。小林絵里は気立てが柔らかい。標的にされたら、きっと耐えられない。

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