第83章

小林絵里は冷ややかな声で尋ねた。

「どこにいるの?」

 夏目夕子は明らかに虚を突かれたようだった。唐突な質問に戸惑いながらも、口を開く。

「九号公館の8088号室よ」

 小林絵里は一方的に通話を切った。

 ふん……

 忙しいですって? 一体何に?

 女遊びにでも忙しいわけ?

 小林絵里は目を細めた。まだ離婚も成立していないというのに、坂田和也のやり方はあまりにも度が過ぎていないか。

 あっちが離婚を渋るなら、こっちにも考えがある。容赦なんかしてやるものですか!

 帳が下り、街は徐々にネオンの光に包まれていく。

 九号公館に到着した小林絵里だったが、エントランスで足止めを...

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