第838章

小林絵里は終始、目隠しをされたままだった。何ひとつ見えない。頼れるのは耳だけ——音のわずかな違いで状況を探るしかない。

胸の奥が、じわじわと沈んでいく。相手は頑として口を開かない。誰なのか、見当もつかなかった。

どうして喋らない?

わたしに、気づかれたくないから……?

だとしたら、知っている人間ということになる。

いったい誰……?

車に揺られるあいだ、小林絵里は必死に考え続けた。何度か話しかけてみたが、男は完全に無視。返事ひとつない。

やがて、言葉も尽きたころ。目的地に着いたらしい。

キキッ、と車が止まる。すぐに腕を取られ、また車外へ引き出された。促されるまま、どこかへ歩かさ...

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