第852章

高川寒彦は取り出して画面を確かめると、眉間にしわを寄せた。それでも通話をつなぐ。

「……もしもし」

小嶋未沙の声が飛び込んでくる。

「どこにいるの? どうしてまだ帰ってこないの?」

高川寒彦は冷ややかに言い放った。

「今夜は帰らない」

「ダメ!」小嶋未沙の語気がいきなり跳ね上がる。「絶対に帰ってきて。高川寒彦、あのとき何て言ったか忘れたの? 結婚してまだどれだけよ。もう忘れたっていうの?」

高川寒彦の表情は氷みたいに固い。口から出る言葉にも、熱など欠片もない。

「忙しい。くだらないこと言うな」

「くだらないこと?」小嶋未沙の声がさらに高くなる。「ただ帰ってきてって言ってるだ...

ログインして続きを読む