第856章

薬剤を注射すれば、彼女はしばらく意識を失う。そのあと目を覚ましたときには、視力が戻っているはずだ。

小林絵里はうなずいて承諾した。

ほかに手段がない。

ずっと見えないままなんて、ありえない。そんな状態では、あまりに受け身すぎる。

賭けるしかなかった。負けたのなら――そのときは受け入れるしかない。

けれど、もし勝てたら?

南は傍らで見守り、医師が小林絵里に薬剤を投与し終えると、医師と連れ立って診察室を出た。

廊下の突き当たり。窓の隙間から冷たい風が吹き込み、肌を刺す。

医師が恭しく言う。

「ご指示どおり、すべて手配いたしました。彼女の目も、間もなく回復いたします」

「……あ...

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