第858章

「うん」

 小林絵里はこくりとうなずき、車内で静かに待った。

 南がレッカー車を手配し、四十分ほどしてようやく到着する。車が運ばれていくのを見届けてから、二人はバス停へ向かった。

 距離にして二キロ。歩けばたいしたことはないはずなのに、着くまでに二十分近くかかった。

 絵里は体が弱く、途中で何度も立ち止まっては息を整えなければならなかったからだ。

 楓の苑近くの停留所にバスが着くころには、空はすっかり暗くなっていた。

 冬は、日が落ちるのが早い。

 絵里は南を見上げて言う。

「あなたも一緒に上がって。少し休んで、お茶でも飲んでいって」

 けれど南は首を振った。

「いや。無...

ログインして続きを読む