第862章

「うそでしょ……!」

 松本桜は部屋の中の光景を目にした瞬間、思わず叫び、勢いよく扉を開けて飛び込もうとした。

 だが小林絵里がその腕をつかんで止め、すぐに扉を閉める。

 松本桜は噛みつくように絵里を見た。

「なんで止めるの? 入らせてよ!」

 廊下の灯りは薄暗い。小林絵里の顔色は青白く、瞳の焦点がわずかに揺れていた。唇をきゅっと結び、かすれた声で言う。

「わたし、もう……あの人とは離婚してるの」

 つまり、彼が誰と一緒にいようと、それは彼の自由だということ。

 松本桜は言葉を失った。

 ――そうだ。離婚したのなら、今さら坂田和也を責める立場なんてない。

 もう、関係ない...

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