第865章

  朝の通りは車もまばらだった。小林絵里はしばらく歩き、ようやくタクシーを拾う。

  「運転手さん、空港まで」

  淡々と言い捨てると、窓の外へ視線を流した。瞳の奥は、死んだ水面みたいに静かだった。

  そのころ――。

  庄司北斗は、去っていく小林絵りの背を見送りながら、坂田和也に電話をかけた。

  「社長。小林さんが出ていきました。向かった先は……たぶん空港です」

  ……

  渋滞もなく、空港に着いたのはまだ7時前。小林絵里は最短の便のチケットを買うと、そのまま保安検査場へ向かった。

  「小林絵里」

  そのとき、背後から聞き慣れた声が飛んできた。

  小林絵里の...

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