第869章

「わ……わたし……」

 藤原千惠は全身を震わせ、とうとう一言も紡げなくなった。

 証拠は目の前に揃っている。いまさら何を言えばいい?

 彼女はもう藤原家の娘じゃない。藤原家の令嬢でもない。

 ――それで、自分に生きる道なんてあるの?

「父さん、この鑑定書は出どころがはっきりしない。もう一度やり直そう。誰かに細工されたら厄介だ」

 藤原景治が冷静に言う。

 藤原天男は藤原千惠の、見慣れない顔を見つめたまま、ふいと視線を外した。

「お前が手配しろ」

「承知しました」

 藤原景治はもともと冷淡だ。藤原千惠に対しても、藤原景丞のように甘やかすことはない。まして彼女が藤原家の娘では...

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