第872章

そう言いながら手をひと振りすると、瀬戸玉恵が押し入れられるようにして入ってきた。

リビングにいた面々の視線が、一斉にそちらへ向く。

瀬戸玉恵の顔色は青くなったり白くなったりで、見るからにひどい。

藤原天男が彼女を見据える。

「どこへ行くつもりだ?」

傍らにはスーツケースがひとつ置かれていた。

瀬戸玉恵は答えない。むしろ、顔色はみるみる悪くなっていく。

松本幸雄が口を開いた。

「藤原会長。最近、いくつか掴みまして。あの年、孤児院で藤原千惠が成り代わった件――その一部始終です。ご覧ください」

彼は一枚の書類を取り出し、藤原天男の前へそっと差し出した。

ページを繰る。そこで初め...

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