第874章

ここ数日、小林絵里のもとには坂田和也から一切連絡がなかった。胸の奥に、じわりと不安が広がっていく。

コンコン!

扉を叩く音。絵里はスマホから視線を離し、入口へ顔を上げた。

「どうぞ」

扉が開き、藤原景丞が入ってくる。薄く笑みを浮かべ、手には小ぶりで洒落た箱を抱えていた。

「絵里。帝都に出張したときに見つけたんだ。君に似合うと思ってさ……つけてみて。気に入るかどうか」

箱を絵里の前にそっと置き、景丞は期待を隠しきれない目で彼女を見る。

藤原家に戻ってから、もう一か月。家の者たちは、失っていた分まで埋め合わせるように、ありったけの愛情を注いでくれた。与えられるものは、ほとんど全部。...

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