第885章

小林絵里が突然帰ると言い出し、藤原家は完全に不意を突かれた。

藤原景治と藤原天男が絵里の部屋へ向かうと、彼女はもう荷物をまとめ終えていた。二人の顔には、隠しきれない不安が浮かぶ。

「絵里、何があったんだ。どうしてそんなに急ぐ?」

一歩前へ出た藤原天男が問いかける。

小林絵里は息を整え、きっぱりと言った。

「坂田和也さんが怪我をしたんです。わたし、戻って会いに行かないと」

「……は?」

藤原天男が言葉を失う。

ついこの前まで、あれほど坂田和也を嫌がっていたはずだ。顔も見たくないとまで言っていたのに。どうして急に――。

絵里は藤原天男を見上げた。目の縁が赤く、声が震える。

「...

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