第890章

「明けましておめでとう。最近どうしてる?」

高川寒彦の、どこか笑みを含んだ声が耳に届いた。

小林絵里は答える。「元気だよ。実の両親が見つかったの。今はもうG市に戻ってる」

「ニュースで見た。まだ、おめでとうって言えてなかったな」

その口調が、妙に寂しげに聞こえて、小林絵里は視線を落とした。何を言えばいいのか、言葉が出てこない。

二人の関係は、あと一枚の薄い膜を残すだけ。そこを破ってしまえば、きっと何もかもが元には戻らない。

沈黙が落ちた。どちらも、口を開けないまま。

「……俺、国外に行く」

しばらくして、ようやく高川寒彦が言った。

小林絵里ははっとして、「どうして急に海外に...

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