第953章

小林絵里「えっ?」

松本桜がまだ何か言うより先に、隣からひやりとした気配が伝わってきた。さっきまでの浮かれた熱がすっと引き、彼女は横にいる不機嫌そうな男をちらりと見て、ふん、と鼻を鳴らす。

松本桜は小林絵里の腕に自分の腕を絡め、そのまま外へ歩き出しながら言った。

「ひとり、ちょうだい。わたし、産みたくないの」

「産みたくない、だと? それとも古川修一が産めないのか?」

背後から、男の冷えた声が落ちてきた。悪意がべったり張りついた声——。

産みたくないのと、産めないのは、まるで別物だ。

松本桜が坂田和也の好き放題を許すわけがない。振り返り、ぎろりと睨みつける。

「黙ってよ。ここ...

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