第115章

キアラン視点

三階建ての古びたアパートの重い木の扉を押し開けると、匂いが真っ先に鼻をついた。揚げ物の油、古い絨毯、湿った漆喰。階下のマーフィーのパブはもうすっかり盛り上がっていて、低音のきついロックと男たちの笑い声が、いつものように薄い壁をにじむように通り抜けてきていた。俺は階段を二段飛ばしで駆け上がり、指は無意識のうちにポケットのジッポーへ伸びていた。刻まれた文字を、お守りに触れるみたいになぞる。

あたたかくしていてくれ、キアラン。

三階の踊り場で、俺は足を止めた。部屋の扉の下から明かりが漏れている。そして中から、母さんの声が聞こえた。くぐもっていて、涙で重たく濁った声だった。それに応...

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