チャプター 72

サマー視点

思わず笑みがこぼれた。すると彼の視線がほんの一瞬だけ私の口元へ落ち、それからふいと逸らされる。耳まで、さっきよりいっそう赤くなっていた。

私たちの間の沈黙が、ふっと形を変えた。あたたかくて、肌が意識でぞくりと粟立つような、そんなものに。座っている距離の近さがやけに気になった。いま彼の太腿が私のそれに押し当てられていることも、喉元で脈が打っているのが見えることも。

手を何かで忙しくしたくて、私はロンシャンのバッグに手を伸ばした。「おやつ、持ってきたの」そう言いながら、朝詰めた小さなクーラーバッグを取り出す。

キーランの眉が上がった。「クーラーバッグ丸ごと?」

「そんな大きく...

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