第3章

三日後、私は退院した。

迎えは誰も来なかった。蓮司は「仕事が立て込んでいる」と言っていた。私はタクシーでアパートに戻り、携帯電話に三十件以上の不在着信があることに気づいた。すべて記者からだった。

ニュースを開くと、見出しが躍っていた。

「特別捜査官、職務怠慢で暴行被害か。逃亡犯三名は逮捕」

そして、週刊誌の見出しはこうだ。

「検事補の恋人が涙の告白『彼女は警告を無視し、単独行動に固執した』」

「警視庁内部調査:榊原捜査官の『ヒーローコンプレックス』が悲劇を招いた可能性」

さらに、最も胸糞の悪い見出し。

「現場から女性捜査官の衣服発見。不適切な関係の証拠か?」

アパートのドアの前で立ち尽くし、震える指で次から次へと記事をスクロールした。そのどれもが、私を屈辱の柱に磔にしていた。

被害者が、悪役に仕立て上げられていく。

携帯が鳴った――警視庁の人事部からだった。短い、冷淡で事務的な電話。調査が終わるまでの停職処分、内部監察への協力義務、そしてメディアへの接触禁止が告げられた。

電話を切り、壁に寄りかかった。笑いたいのか泣きたいのか、自分でも分からなかった。

二年間の努力、局史上最年少の犯罪プロファイラー、警視庁の期待の星――そのすべてが一夜にして消え去った。

一方、蓮司は? SNSを開くと、いくつものニュースサイトに彼の写真が掲載されていた。

「黒嶋蓮司検事補:暗黒の時代における正義の守護者」

写真の中の彼は、非の打ちどころのないスーツに身を包み、毅然とした表情でインタビューに答えていた。

「今回の事件で、正義の代償がいかに大きいかを思い知らされました。恵莉奈のことは胸が張り裂ける思いですが、この一件が今後の悲劇を防ぐための司法制度改革のきっかけとなることを願っています……」

それ以上は見ていられず、私はスマートフォンの電源を切った。

それからの日々は、まるで生殺しのようだった。

警視庁の内部監察チームから三度聴取を受け、そのたびに「榊原氏との個人的な関係が、あなたの職業的判断を鈍らせたのではないか?」と仄めかされた。

報道陣はアパートの前に張り込み、食料品の買い出しにさえ出られない。「失脚した捜査官、独り外出」などという見出しと共に、写真を撮られる始末だった。

SNSでは、ネット民たちがとっくに私に判決を下していた。

「また枕営業で成り上がった女か」

「警視庁の恥さらし」

「彼氏が可哀想。あんな破綻者にはもったいない」

そんな中、蓮司は昇進した。

ニュースは彼が「プレッシャーの中で冷静さを保ち、三人の逃亡犯逮捕を成功させた」功績で、次席検事に昇進したと報じていた。

二十九歳での次席検事就任――神波県史上最年少だ。

その夜、蓮司がようやく会いに来た。病院でもなく、慰めるためでもなく、別れを告げるために。

彼はアパートのドアの前に立ち、不本意と苦痛の仮面を被ったような顔をしていた。

「恵莉奈、ずっと考えていたんだ」彼は私の目を見ようとせず、そう切り出した。「この期間は…俺たち二人にとって、あまりに大きな負担だった。少し距離を置いて、お互いの気持ちを整理する時間が必要だと思う」

私はドアフレームに寄りかかり、冷ややかに彼を見つめた。「別れたいのね」

「別れるんじゃない――ただ…一時的に離れるだけだ」蓮司は訂正した。「君にはセラピーが必要だし、俺にも癒やす時間が必要だ。お互いにこの影を乗り越えられたら、また…」

「また、何?」私は彼の言葉を遮った。「『失脚した捜査官』の恋人が、あなたのキャリアの足手まといにならなくなる、とか?」

蓮司の表情に一瞬、居心地の悪さがよぎったが、すぐに「君のためを思って言っているんだ」という見せかけの顔に戻った。

「そんな風に思われるのは辛いよ」彼は言った。「でも、君の気持ちは尊重する。年末までの家賃は俺が払い続けるし、セラピーの費用も持つ。恵莉奈、君を見捨てるわけじゃない。ただ――」

「出ていって」

彼は去っていった。階段を下りていく足音は、驚くほど軽かった。

カーテンの隙間から、階下に白いポルシェが停まっているのが見えた。運転席の窓が下り、現れたのは雑誌の表紙から抜け出してきたようなきれいな女性だった。

西園寺颯花。知っている――西園寺財閥の令嬢で、神波の社交界の花形だ。

蓮司は車に近づき、身をかがめて何かを言うと、助手席のドアを開けて乗り込んだ。

ポルシェは走り去った。その排気ガスさえもが傲慢に見えた。

窓辺に立ち、角を曲がって消えていく車を見送りながら、私は不意に笑い出した。

涙が出るまで、笑い続けた。

つまり、彼はもう次の相手を用意していたのだ。道理でこんなにもあっさりと別れを切り出せるわけだ。

それからの三日間、私はゾンビのように生きた。食事もせず、ろくに眠りもせず、ただコンピューターの前に座り、蓮司の裏切りの証拠を探し続けた。

彼のメール、クラウドストレージ、SNSアカウントにハッキングした。警視庁の犯罪プロファイラーとして、私にはそのスキルがあった。

クラウドのバックアップから、颯花とのチャットログを見つけ出した。

タイムラインは六ヶ月前――ちょうどダークウェブキラー事件が始まった頃に遡る。

蓮司:「恵莉奈はどこまで突き止めた?」

颯花:「ダークウェブの取引が私の実家に繋がっているところまで追跡してるわ。いずれ資金洗浄のことも突き止めるでしょうね」

蓮司:「なら、そうさせなければいい」

颯花:「何か考えがあるの?」

蓮司:「府中刑務所から脱獄した連中を知っている。奴らは俺に借りがある」

颯花:「まさか……」

蓮司:「失脚した警視庁捜査官が悲劇に見舞われる。メディアは彼女に同情はするだろうが、事件そのものを深くは掘り下げない。そして俺は、悲劇に巻き込まれたヒロイックな恋人になる」

颯花:「蓮司、あなたって天才ね。事が済んだら、父があなたの投資を後押しするわ」

蓮司:「投資だけじゃ足りない。次席検事のポストが欲しい」

颯花:「いいわ。それと、その後は彼女と別れてちょうだい。私の男がお荷物を引きずっているなんて嫌だもの」

蓮司:「心配するな。彼女が破滅すれば、別れるのは必然だ」

私は画面を凝視した。指が震えていた。

すべての言葉が証拠だった。すべての文章が、彼を刑務所に送ることができる。

チャットログのスクリーンショットを撮り、警視庁内部監察に連絡しようとしたその時、蓮司からの新しいメッセージが目に入った。

蓮司:「颯花、クラウドのパスワードは変更した。俺の携帯からもチャット履歴はすべて消去したぞ」

颯花:「用心深いこと。でも、私たちのしたことを考えれば当然かしら……」

蓮司:「死刑にさえなりかねないことだからな。😏」

カーソルが「送信」ボタンの上で止まった。

今この証拠を提出しても、捏造だと主張されるだろう。何しろ私は、元恋人を陥れる動機を持った「情緒不安定な被害者」なのだから。

たとえ証拠が受理されたとしても、長い司法手続きの間に、蓮司にはさらなる証拠を隠滅する十分な時間が与えられる。

そして何より、西園寺家には金とコネがある。日本一の弁護団を雇うことだってできるだろう。

私が勝てるとは限らない。

コンピューターの電源を落とし、バスルームに向かった。

バスタブには熱い湯が張られ、湯気が鏡を曇らせていた。そこに映るのは、虚ろな目をした憔悴しきった顔――私自身の亡霊だった。

薬棚からカミソリの刃を取り出し、バスタブに身を沈めた。

熱い湯が体を包み込む。心地よかった――この数日間で初めて感じた安らぎだった。

刃が手首を滑り、血が噴き出し、透明な湯を赤く染めていった。

痛くはなかった。というより、心の痛みに比べれば、この肉体的な痛みなど無に等しかった。

血が湯の中に拡散していくのを眺めながら、記憶が脳裏を駆け巡った。

初めて蓮司にデートに誘われた、あの海辺のレストランで、「君は俺が会った中で一番賢い女性だ」と言ってくれたこと。

彼のアパートのバルコニーでの初めてのキス。背後には神波県の夜景が煌めいていたこと。

「愛してる」と言った時の、あの誠実そうな瞳。私は運命の人を見つけたと信じて疑わなかった。

すべてが偽りだった。

すべてが、手の込んだ詐欺だったのだ。

意識が朦朧とし始め、バスルームの天井が回りだした。携帯電話が鳴っているのが聞こえる――また記者だろう。

どうでもいい。もう何もかも、どうでもよかった。

この世界は私に不公平だったから、私の方からお暇する。

蓮司、颯花、あなたたちの勝ちよ。

私は目を閉じた。最後の意識が、温かい深紅の中へと消えていった。

これで、終わり。

――本当に?

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