第5章
「恵莉奈、行くぞ」蓮司が懐中電灯を持って戻ってきた。「そばを離れるな」
『そばを離れるな、ですって? どちらがどちらの後を追うことになるか、見ものね
私たちは倉庫に向かって歩いた。先頭は蓮司、私はその後ろ。注射器に手をかけたまま。
中に入ると、懐かしいほどのカビと錆の匂いが鼻をついた。何もかもが寸分たがわずそのままで、腐りかけた木箱さえも同じ位置にあった。
「俺は一階を調べる」と蓮司が言った。「お前は上へ行け。何か聞こえたら無線で連絡しろ」
「わかった」私は完璧に従順なふりをして頷いた。
蓮司は不意に立ち止まり、私をじっと観察した。表情の読めない目で、私の瞳をのぞき...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
縮小
拡大
