第9章

蓮司の呻き声が倉庫に響き渡り、次第に弱まっていく。彼は鉄骨からぐったりとぶら下がり、絞りきった雑巾のようだった。

時間を確認する――午前二時十五分。

私はバックパックから小型のブルートゥーススピーカーを取り出す。警察が取調室で使う類のものだ。音質は極上で、あらゆるディテールをクリスタルクリアに再現する。

前の人生で、私は取調室で数え切れないほどの犯罪者の自白を聞いてきた。今度は私が「証拠」を捏造する番だ。

ノートパソコンを開き、事前に編集しておいた音声ファイルを呼び出す。元ネタは、蓮司のスマホをハッキングした際にダウンロードした、彼と颯花の通話記録だ。元の音声があれば、望み...

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