第102章 ベッドで礼をしろ

「……ああ」

彼は短く応じた。いつもより低い声。胸の奥で鳴るような、沈んだ響きだった。

白川凰姫は脇にある掛け布団の端をきゅっと握り、勇気を出して口を開く。

「今夜のこと……ありがとう」

一拍置いて、さらに声を落とした。

「それと、宝石のことも……聞こえたの」

書斎で、彼がかけていたあの電話のことだ。

数秒、空気が止まる。

それから、彼の鼻先でごく小さな音がした。ため息に近い。

「礼は言うな」

「お前は俺の奥さんだ」

当たり前みたいな言い方なのに、有無を言わせない強さが混じっていた。

彼女が彼の妻である限り、彼がすることはすべて当然だと――そう言い切るみたいに。

白...

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