第116章 嬉しすぎた

今夜も、これまで数えきれないほど出席してきたパーティーと同じように、自分は黙ってそこに立つだけの「背景」になるのだと、白川凰姫は思っていた。

ところが。

芳丸巡哉は何人かの財界の名士と挨拶を交わしたあと、彼女を伴って人波をすり抜け、休憩スペースのほうへ向かった。

「どこへ?」白川凰姫が小さく訊く。

「人に会う」芳丸巡哉の答えは、それだけだった。

彼の足が、一人の女性の前で止まる。

レトロな墨緑のベルベットのロングドレス。柔らかく、それでいて堂々とした佇まい。歳月は彼女にやさしく、目尻に刻まれた浅い皺さえ、むしろ艶を添えている。

その顔を認めた瞬間、白川凰姫の呼吸が止まった。

...

ログインして続きを読む