第119章 彼は女に気を取られた

「文井部長」安藤汐は、無理に笑みを作った。

言葉を選びながら、慎重に切り出す。

「林市のプロジェクトの件で、いくつかご相談したいことがありまして」

文井哲は鼻で笑い、椅子の背にもたれた。

「林市の案件はもう終わった。安藤嬢」

丁寧ではあるが、どこかよそよそしい。かつての親しみやすさは影もない。

安藤汐の顔色がさっと薄くなる。もう遠回しはやめた。

「文井部長。私、どうしても納得できないんです。白川凰姫は一体、どんな手を使ったんですか」

文井哲は彼女の清純で幼さの残る顔を眺め、くつくつと笑った。嘲りが滲む。

「安藤嬢。君は名門大の出だろう。どうしてそんなに甘いんだ」

立ち上が...

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