第124章 人の前で彼女を困らせる

芳丸巡哉は、彼女の瞳に滲む懇願を見つめた。

それだけで――胸の奥に沈めていた怒りが、理由もなくふたたび燃え上がる。

放してやれ、だと?

五年だ。傍観するだけの位置から、少しずつ手を伸ばし、盤面を組み替え、ようやく彼女を自分の領域へ引き入れた。

それを「息ができない」の一言で、手放せと?

芳丸巡哉の表情が、じわじわと冷えていく。

彼は手を伸ばし、白川凰姫の顎をつまんだ。逃げられない角度で持ち上げ、無理やり目を合わせる。

「俺を見ろ、白川凰姫」

掠れた低音。甘さのない、危うい響き。

白川凰姫は、その底の見えない瞳に、憐れみの欠片も見つけられなかった。

あるのは嵐だけ。

「も...

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