第129章 もし、彼が救う人を間違えたのなら。

彼女と安藤汐は、たった一度顔を合わせただけだ。

それでも――妙に印象に残っている。

ほんの三十分ほど前。安藤汐が芳丸巡哉の執務室に入ってきて、「お食事のお時間です」と声をかけた。

若い。綺麗。まだ青さの残る、無垢さと艶が同居した空気。

それが、五年前の白川凰姫にあまりにも似ていた。

芳丸グループの社長室に出入りできる人間は限られる。

仕事が抜きん出ているか――あるいは。

どちらにせよ、把握しておく必要がある。新谷知代はそう判断した。

三十分後、彼女のスマホに一件の資料が届く。

安藤汐、22歳。新卒。

添付写真の少女は眉目が整い、どこか儚げで、守ってやりたくなる雰囲気を纏っ...

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