第131章 芳丸奥さんはただの飾り物だ

文井哲は安藤汐のマンション前まで乗りつけず、近くの人通りのない公園脇に車を停めた。

「安藤汐」

エンジンを切り、彼は横を向く。熱を帯びた視線が、まっすぐ彼女を射抜いた。

「ときどき、芳丸社長が羨ましくなる」

「……何が?」

安藤汐の頭は、酒のせいで鈍かった。

「羨ましいんだよ……君みたいな宝物を手に入れられることが」

文井哲は声を落とす。甘く誘うような響きで続けた。

「芳丸社長に選ばれた女って、どんな味がするのか……ずっと考えてた」

安藤汐の胸がひゅっと縮む。酔いが一気に引いていった。

――おかしい。

「文井部長、酔ってます。もう遅いので、帰ります」

そう言いながらド...

ログインして続きを読む