第141章 決裂

彼はゆっくりと上体を起こし、彼女の上から身を引いた。

部屋に残ったのは、白川凰姫の押し殺した嗚咽だけ。

長い沈黙のあと、芳丸巡哉が口を開く。声には、かすかに滲む疲れと脆さがあった。

「……五年だ、凰姫」

「俺に……本当に、何も感じないのか」

白川凰姫の泣き声が、ぴたりと止まる。

目の前の男を見つめた瞬間、胸の奥を見えない手で握り潰されるみたいに痛くて、息が詰まった。

感じないはずがない。

この五年の穏やかさ。彼が与えてくれた庇護。強引なくらいの強さ。時折の、優しさ。

それらは息もできないほど密な網になって、彼女を包んでいた。

感謝している。けれど、怖い。

自分はただの駒...

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