第143章 資格がない

取引で始まった関係なら――それが醜く歪んでしまう前に、せめて体面だけは保ったまま終わらせるべきだ。

同じ頃、社長室では坂東補佐が、できることなら自分の存在ごと小さく折り畳んで、この低気圧の渦の中心から消え去りたい気分でいた。

芳丸巡哉の耳には、ついさっき白川凰姫が言い放った言葉がまだ残響している。

財産はいらない。

早く出ていく。

サインだけさせてくれればいい。

ふ、と。

笑いとも呼べない音が漏れた。軽く、冷たく。

坂東補佐は首筋の産毛が総立ちになるのを感じた。

次の瞬間、芳丸巡哉が手を上げる。

「……ビリッ」

離婚届――いや、離婚協議書が、彼の指先で引き裂かれた。

...

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