第144章 先に金を彼に渡す

「……松本部長。これはファイヤが足りるかどうかの話じゃありません」

白川凰姫はダイヤを二粒、ベルベットの上に置いた。声は澄んでいて、冷静だった。

「カット角のミスです」

「ここのクラウン角。うちの設計図から、ほぼ0.5度ズレてます。たった0.5度と侮らないでください。これで光が底から逃げる。テーブル面へ全反射で戻るはずの光が、漏れてしまうんです」

専門家らしい言い方で、核心だけを突き刺す。

松本部長の笑みが、わずかに引きつった。

隣の技術責任者が汗をぬぐい、言い訳めいた声を出す。

「白川嬢、今回の原石はもともとクラリティが最上級ではなくてですね。カットで多少のロスや誤差が出るの...

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