第146章 初めて彼女を助けたわけじゃない

彼が駆けつける途中、普段は鬼神の類を一切信じないくせに、天に祈っていた。

白川凰姫が、どうか無事でありますように。たとえ――自分のもとを去ることになっても。

けれど人間は、いつだって欲深い。

いま彼女はこの腕の中にいる。

そうなれば、もう少しだけ。もっと、もっと――と望んでしまう。

白川凰姫は、時間が凍りついたように感じた。

血の匂いと土埃が混ざり合い、鼻腔の奥まで刺さってくる。

芳丸巡哉が彼女の前に片膝をつき、冷や汗が蒼白な頬を伝って落ちた。背中に広がっていく血の色が、目に痛いほど鮮烈で、ぞっとするほど生々しい。

白川凰姫は口を開こうとした。だが唇はガムテープで塞がれていて...

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