第156章 あなたの女になりたい

芳丸巡哉に、バレた。

きっと、もう気づいている。

この男のやり口を、安藤汐は痛いほど知っていた。

芳丸巡哉はその場で爆発しない。獲物が「まだ安全だ」と勘違いしたまま、じわじわと自分で罠の中心へ歩いていくのを眺めるのが好きなのだ。

背中を冷や汗が伝い、掌に握り込んだUSBメモリは、湿って冷たく、ぬめりまで帯びてきた。

今これを渡せば、死。

渡さなければ、母の手術――それも、死。

どっちに転んでも行き止まり。

安藤汐は冷たい壁に背を預け、頭の中がぐちゃぐちゃになるのを感じた。

文井哲の脅し。病床の母の顔。芳丸巡哉の底の見えない目。

それらが交互に、脳裏を焼く。

――なら。

...

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