第29章 彼女は妊娠した

白川凰姫の背中が、瞬間に強張った。

相手に世間話をする気など微塵もない。声には感情が一切乗らず、命令を読み上げるみたいに冷たい。

「手段は問わん。30分以内に、巡哉がどこにいるか突き止めろ」

白川凰姫の心が、底まで沈んだ。

受話器越しでも圧が滲み出てくる。芳丸徳安は淡々と、しかし逃げ道を塞ぐように告げた。

「自分の夫の行方すら把握できないなら――芳丸の奥さんを名乗る必要はない」

「ツー……ツー……ツー……」

通話は一方的に切られ、鋭い話し中の音だけが耳を刺す。

白川凰姫はスマホを握ったまま、受話の姿勢で固まっていた。呼吸すら忘れたみたいに、動けない。

江口梓月に嵌められたこ...

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