第34章 出ていけ

その頃――城西、川瀬清子の小さなアパート。

「……芳丸巡哉……」

ベッドの上の少女は毛布にくるまり、熱で真っ赤になった顔だけを覗かせていた。唇は乾いて皮がめくれ、眉間には深い皺。悪夢の底でもがいているみたいに、苦しげだ。

「凰姫、起きて。少しだけでも食べてから寝よう」

川瀬清子は器を枕元に置き、そっと額に触れる。――熱い。ぞっとするほどの熱。

高熱は、もう丸一日以上続いていた。

清子には分かっている。彼女を折ったのは、あの世間を覆い尽くした騒ぎだ。

「……芳丸巡哉……」

かすれた寝言が、ふいに漏れる。弱々しく、泣き声を含んだ声。

清子は身を乗り出してようやく聞き取った。胸を...

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