第50章 名ばかりの芳丸奥さんにすぎない

芳丸巡哉の足が、その場でぴたりと止まった。

顔に浮かんだ色は、ほんの数秒で疲労から愕然へ、そして凍てつく無表情へと塗り替わっていく。深い眼差しにかろうじて残っていた温度も、その一言で完全に消え失せ、果てのない冷気だけが沈んだ。

やはり彼女は、本気で一刻も早くここを去りたかったのだ。

ならば、自分が彼女と重ねてきたひとつひとつのぬくもりは何だったのか。あれも全部、偽りだったのか。

結婚してからの二人は、少なくとも外から見れば、ごく普通の夫婦だった。白川凰姫は薄情で、ベッドの上ではいつも頬を染め、彼が根気よくあやし、甘く誘わなければならなかった。

いつかは彼女の心も溶けると、いつかはそ...

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