第60章 落ち着かない

芳丸巡哉は足を止め、耳の奥がむず痒いほど熱を帯びた。

二人で部屋へ戻ると、たしかにお婆様の言ったとおりだった。空気には甘い香りが、あるのかないのかふわりと漂い、照明はわざとらしいほど黄味を落としている。

芳丸巡哉は上着を脱ぐとソファへ放り、仕立てのいい白いシャツだけになる。窓際へ行って煙草に火を点けた。煙がゆらゆらと揺れて、表情は読み取れない。

白川凰姫はソファにぎこちなく腰を下ろす。さっきのお婆様の口ぶりだと、しばらくここで過ごせということらしい。

お婆様のそばにいたい気持ちはある。けれど、芳丸の家に居続けるのは――正直、気が重かった。

一本吸い終えた芳丸巡哉が灰皿に押しつけ、身...

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