第63章 あなたには少しの得にもならない

彼女ははっきりとは口にしなかった。けれど「友だち」という二文字に、あの曖昧な目線。さらに周囲の「分かってる」空気の冷やかしが重なれば、答えなど最初から見えている。

耳に届くか届かないか、絶妙な音量の囁きが飛ぶ。

「友だちって言ったって、誰だよ。芳丸社長に決まってるだろ」

「仲いいよね、あの二人。もう何年? 幼なじみって羨ましい」

「ねえ。新谷嬢、そのネックレスすっごく似合ってる。ほら、どれだけ着飾っても無駄な人っているじゃない? 品って、真似できないから」

白川凰姫は視線を落とし、空っぽの首元を見た。伊藤先生は、彼女には複雑な装飾は似合わないと言った。

その視線が、無意識にもう一...

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